六甲アンテナ
ダイバーシティは進んでる?~大阪万博で見えた現在地~

万博が閉幕して2ヵ月。右肩上がりに伸びた来場者数と熱気は、「行くなら少しでも涼しくなった10月に・・・」と楽観視していた私に、駆け込みの余地さえ残さずに幕を閉じました(笑)。きっと同じように行きたくても叶わなかった方も多かったのではないでしょうか。
今回は、車いすユーザーの同僚が万博に行った体験と、私自身が会期中イベントの動画配信を通じて、万博イヤーの振り返りとして、アクセシビリティやダイバーシティの課題と可能性を考えてみたいと思います。
車いすで触れた万博
同僚は万博に季節ごとに訪れ、異なる天候や出来事を体験しました。
■4月・・・曇りで過ごしやすく初訪問に最適
■7月・・・雷雨に遭遇。車いすを走らせて大屋根リングで雨宿り
■8月・・・酷暑で体温調節がしにくい体はバテ気味でも夏の熱気を体感!
■9月・・・台風の影響で水溜りの後片付けの対応に追われるパビリオンも
■10月・・・閉幕直前の混雑で退場ゲートの一時閉鎖にヒヤリ
交通は自家用車を利用し、夢州の障がい者駐車場から東ゲートへ直接アクセス。一般来場者の長い列とは分離され、障がい者レーンでは会場まで約15分、入場待ちに10分ほどかかりました。(写真下)
障がい者用には会場内に専用駐車場が設けられていました。これは移動に制約のある人が安心して参加できるための合理的配慮で、ダイバーシティの理念が交通の仕組みにも表れていました。
印象的だったのは「MONOKATARI」ブースでのVR体験。工房を360°で巡るデジタルファクトリーの没入感と、映像連動に驚き、バーチャルショッピングまで可能だと知り、未来社会の入口を覗いたような体験だったと語っていました。
また、パビリオン待ちの列には『優先キュー』という表示があり、これは英語の Queue (列) をそのまま使うことで、国際的な来場者にも配慮されていました。
加えて、“良かったこと”と“困ったこと”も聞かせてもらったので紹介しますね。
◆良かったこと
・多目的トイレはコモンズやパビリオン内が意外と空いていて穴場
・一般来場者と同じように楽しめ、特別扱いを意識せずに過ごせたホスピタリティ
◆困ったこと
・海外パビリオンの優先レーンは混雑時に分かりづらい所があり、スタッフも不在
・一部のスロープが急斜面で、自走では展示物を見る余裕がなかった
・帰宅時は一般来場者と同じ導線で、混雑時に車いすが視界に入りづらく接触が多かった
オンライン視聴で広がる万博体験
私は動画配信などで万博のイベントを視聴しました。
「誰もがオシャレを楽しめる世界へ」をテーマにした「未来のおむつのファッションショー」は、ネガティブなイメージのあるおむつを、見えない部分だからこそクールでカッコいい“魅せるおむつ”への挑戦でした。排泄障害のある私に、この試みが強く響きました。QOLを高める工夫こそがダイバーシティーの本質であり、誰もが高齢と介護に直面する可能性があるからこそ共感を呼ぶテーマだと感じました。
さらに、希少難病の啓発、入院中の子どもたちに万博を届ける「オンライン遠足」、LGBTQ+の権利と社会包摂を考えるイベントなど、多様な声が映し出されていました。こうした取り組みからダイバーシティの広がりを身近に感じました。
万博を振り返って
私は会場には行けませんでしたが、オンラインを通じて少し触れることができました。会場では多くの出会いがあり、きっと次につながる出会いもあったと思います。
振り返ると、車いすだけでなく、視覚障がい者向けには触地図やAIナビ、聴覚障がい者向けには遠隔手話や多感覚アラートなどの工夫もありました。
一方で、スロープの急斜面や導線の混雑など課題も残されていましたが、多様な声が交わり社会をアップデートする力を感じました。参加や理解のハードルを下げる仕組みもあり、まさにダイバーシティの現在地を体感する時間でした。こうした流れがこれからの社会に広がり続けることを期待しています。








